フランダースの犬
私の家は2階建の一戸建です。私は2階の部屋で寝ています。シーは1階のメインの茶の間をシーの部屋にしたので1階で寝ています。
シーはなぜか階段を登ることができません。
夜私が寝ようと階段を登り始めると、階段の下から私をじっと見上げます。その目のクリッとした顔を見て、シーおやすみ!と挨拶しています。
シーも部屋に戻ってぐっすり眠りなさい!
朝起きて階段を降りると、よくシーは階段の下で待っています。しっぽを激しく振り、階段の1段目に前足をかけ、ぴょんぴょんと跳ねながら待っています。
シーおはよう!
私は階段を降りて、はしゃいでいるシーの顔をくしゃくしゃに撫でてあげます。シーは喜んでさらにはしゃぎしっぽを激しく振ります。
朝の儀式です。
一握りの幸せな時間です。
さて今回はフランダースの犬を紹介します。
皆さんご存知の通りフランダースの犬はとても悲しい物語として有名です。
ずいぶん前にテレビアニメの世界名作劇場で放送された悲しい物語だということは知っていました。しかしなぜか最近まで観ることはしませんでした。
世界名作劇場には多くの有名な作品があります。アルプスの少女ハイジにはじまり、フランダースの犬、母を訪ねて3千里、あらいぐまラスカル、ペリーヌ物語などなど。
どれも主人公と暮らしを共にする動物たちが登場します。
アルプスの少女ハイジにはヨーゼフのセントバーナード、フランダースの犬には老犬のパトラッシュ、母を訪ねて3千里には小猿のアメデオ。
子供たちが視聴者のこの番組では、子供たちが喜ぶ動物を登場させることによって、さらに番組に関心を持ってもらおうとしたのでしょうか?
私は繰り返しテレビで放送されるこれらのアニメを何度も観て来ました。ハイジも母を訪ねて3千里も放送される度に観ていたような気がします。
しかしフランダースの犬だけは観ようとしませんでした。それはハイジも母を訪ねて3千里も物語がハッピーエンドで終わるのに対して、フランダースの犬だけは悲しい結末で終わることを知っていたからです。
動物の物語で悲しい結末で終わる作品を観ることは、とても覚悟のいることです。ましてフランダースの犬の結末はとても悲しいと評判でしたからなおさらでした。
しかしシーと暮らすようになり、生活や仕事でいろいろ変化があり、いよいよ観てみようか?いや観なくてはならないと思うようになりました。
極限の悲しい物語は私の心にどう映るのか?どこかでこのフランダースの犬を観ることによって救われたい、救われるのではないかと思うようになったのです。
私はさっそくiPhoneに登録しているU-NEXTで、1話目から全52話まで一挙に観ました。
やはりもう途中からは目に涙を浮かべて観ていました。
フランダースの犬の舞台は19世紀のベルギー北部のアントワープ近くの村。
幼くして両親を亡くした10歳の少年ネロは、農民が絞った牛乳をアントワープまで搬送する仕事でなんとか生計を立てていた祖父のジェハンと2人で暮らしていました。
ネロは絵を描くのが好きな賢く優しい少年で、将来はアントワープの偉大な画家ルーベンスのような画家になることが夢でした。
村の有力者のコゼツ旦那の娘アロアとは唯一の仲の良い友達でした。
毎日ジェハンおじいさんの牛乳搬送を手伝っていたネロは、アロアの家の前を通ります。アロアは家の2階の窓からネロが来るのを待っていて、ネロが通りかかると道で挨拶するのが日課となっていました。しかしアロアの父コゼツは、ネロのことを絵ばかり描いている怠け者だと嫌っていました。貧しいネロをアロアから遠ざけようとしていたのです。
ある日ネロは、牛乳搬送で訪れたアントワープの街で、金物屋の荷車を引く老犬を見かけます。老犬は金物屋の主人にそれはこき使われていて、ひどく苦しそうでした。優しいネロは、そのパトラッシュという名前の老犬のことが気になって頭から離れなくなってしまいます。
朝市のある日、ネロはアントワープの街でパトラッシュの姿を探します。しかしパトラッシュの姿はどこにもなく、ようやく金物屋の主人からパトラッシュを捨てたことを聞き出します。
ネロは土手に瀕死の状態で横たわるパトラッシュを見つけ家に運びます。
そして必至に献身的に介抱をするのです。やがてパトラッシュは目を覚まし、薬草やスープを飲んで命をとりとめます。
しばらくしてすっかり元気になったパトラッシュは、牛乳搬送の荷車を引いてアントワープの街までおじいさんやネロと通い始めることになります。
ネロとおじいさん、そしてパトラッシュ、ささやかな幸せが訪れました。
そんな日々の中、ネロはアントワープで絵のコンクールが開かれることを知ります。1等になれば毎年200フランの賞金がもらえ、絵の勉強までさせてもらえるのです。
ネロはおじいさんにお願いして、コンクールに自分の絵を出してみることに決めました。
そして牛乳搬送の仕事の合間、ネロは絵の勉強を始めるのです。
しかしそれからしばらくしてジェハンおじいさんが過労のため倒れてしまいます。おじいさんがベットで寝ている間、ネロはパトラッシュと牛乳搬送の仕事を頑張って続けました。
そしておじいさんも元気になって来たかと思われたアロアの誕生日の前日、波止場で働いたお金でネロは1番のお肉を買います。おじいさんに美味しいお肉のスープを食べさせてあげたかったからです。
しかしおじいさんは肉入りスープをひと匙飲ませてもらった後、ネロにいい絵を描くんだぞという最後の言葉を残して息を引き取ってしまいます。
ネロは悲しみにくれます。
そんな中、パトラッシュの励ましもあり、ネロは牛乳搬送の仕事だけは続けて行きます。アロアや友人のジョルジュ、ポールも励ましてくれました。
そしてようやくネロはコンクールに出す絵を描き始めるのです。でも最初はどんな絵を描いたらいいかわかりませんでした。
しかしおじいさんの絵なら描ける。ネロはおじいさんとパトラッシュの絵を描くことを決めるのです。
そんな中、村の風車小屋が火事になってしまいます。そして消化に集まった村人たちの前で、意地悪なハンスがネロに放火の疑いをかけるのです。
村人からも信じてもらえなくなったネロは、牛乳搬送の仕事も失ってしまいます。もうパンを買うお金もなくなってしまったのです。
しかしアロアやジョルジュ、ポールの励ましもあり、ネロはコンクールの絵だけは描くのをやめませんでした。そしてコンクール前日ようやく絵を完成させます。
じっと見つめているとおじいさんが優しい声でネロの胸に語りかけて来るそんな絵でした。
無事にコンクールに絵を出品したネロは、クリスマスイブのコンクールの結果発表の日まで、木こりのミッシェルおじさんの世話になることを待ってもらい家で発表を待つことにしました。
いよいよクリスマスイブのコンクールの発表日。ネロはパトラッシュとポールと一緒に公会堂まで結果発表を見に行きます。しかし審査はもめました。ネロの絵を未完成ながら将来性があると高く評価する審査員がいる一方、もう1枚の大人顔負けの完成された絵を評価する声も強かったのです。
結果は、その裕福な家庭の子供が描いた絵が1等になりました。
ネロは自分の絵が1等になれなかったことで目の前が真っ暗になります。
そして雪の降る波止場でパトラッシュを抱きしめます。
パトラッシュもう何もかも終わってしまったんだよ。みんなおしまいになってしまったんだ。
朝から何も食べていないパトラッシュと失意のネロは、雪の降る中家路へと向かいます。途中パトラッシュが雪道の中からあるものを見つけ出します。
それはなんと村の有力者コゼツが落とした大金の2000フランの入った袋でした。
そしてその頃コゼツは雪の中、落とした全財産を血眼になって探していました。しかし見つかりません。
ネロはその大金の入った袋をコゼツ家まで届けます。アロアも妻のセリーナもネロがお金を届けてくれたことに感謝し、クリスマスイブのご馳走を一緒にと誘います。しかしネロの願いは冷えて疲れ切っているパトラッシュにスープを飲ませてあげることだけでした。暖炉の前で眠るパトラッシュをアロアに託し、亡くなったおじいさんが家で待っているような気がするとアロアの家をあとにするのです。
そして家に着いたネロは、家の中をきれいに片付け再び吹雪の中へ出て行きます。
おじいさんの墓の前で、頑張って来たけどダメだった。もう遠くに行きますと別れを言うのでした。
その頃ようやく目が覚めたパトラッシュはアロアの家にネロがいないことに気づきます。もう暖かい暖炉も美味しいスープの匂いもパトラッシュを引き止めることはできません。パトラッシュはネロの姿を求めて降りしきる雪の中へ飛び出して行くのでした。
落とした大金が見つからず絶望の中家へ戻ったコゼツは、ネロとパトラッシュが拾って届けてくれたことを知らされます。
あんなにつらくあたって来たのに、ネロは恨むどころか助けてくれた。
コゼツはやっと自分が犯して来た過ちに気づきます。
ネロに償いをしてあげなければ。
そしてクリスマスを祝おうとヌレットおばさんがネロを訪ねます。木こりのミシェルもネロを迎えにやって来ます。しかしネロは家にはいません。
コゼツもアロアと妻のセリーヌと共に謝りにやって来ます。
アントワープの画家でコンクールの審査員だったヘンドリックレイも、ルーベンスの跡継ぎになる素質があるとネロを訪ねます。
そしてジョルジュとポールもやって来ます。
しかしネロはどこにもいないのです。
コゼツは必ずネロから許しをもらわなければならないと、村中でネロを探すことを指示します。
ヌレットおばさんも、木こりのミッシェルも、コゼツ旦那も、妻のセリーヌも、意地悪なハンスもみんな吹雪の中をネロの名前を叫んで探します。
しかしネロは見つかりません。
ジョルジュとポールは村の教会で泣きながら鐘を鳴らし続けます。
ネロは吹雪の中を歩いていました。おじいさんが作ってくれた手袋も靴も脱ぎ捨てました。
そしていつの間にかアントワープの街に辿り着いていたのです。
そして教会へ向かうのでした。
教会は扉が開いていて、どうしても観たかったルーベンスの2枚の絵もカーテンが開いていました。ネロはやっとルーベンスの2枚の絵を観ることができたのです。
マリア様ありがとうございます。
これだけで僕はもうなんにもいりません。
そこへネロの匂いを嗅ぎつけネロの手袋を咥えたパトラッシュが吹雪の中やって来ます。
ネロの顔を舐め、ネロの隣に横たわります。
パトラッシュお前は僕を探しに来てくれたんだね。
わかったよ。お前はいつまでも僕と一緒だってそう言ってくれてるんだね。ありがとう。
パトラッシュ僕は1番観たかったルーベンスの2枚の絵を観たんだよ。だからだからすごく幸せなんだよ。
パトラッシュ疲れたろ。僕も疲れたよ。なんだかとっても眠いんだ。パトラッシュ。
天から天使が降りて来て、ネロとパトラッシュは一緒に運ばれて行きます。
ネロとパトラッシュは、おじいさんとお母さんのいる遠い国へと行きました。
もうこれからは、さむいこともかなしいこともお腹のすくこともなく、みんないつまでも一緒に楽しく暮らして行くことでしょう。
ネロやパトラッシュがなぜ天国に行ってしまったのか涙が教えてくれるような気がしました。
フランダースの犬を観てとても救われました。
今日も私が晩ご飯を食べている間、シーは近くで横になっています。ファンヒーターが暖かいだけではないかな。
パトラッシュと同じなのかな。
シーのためならなんでもできると思いました。
シーを一生まもります。
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