シーと1つの約束



太宰治の短編小説に「1つの約束」というのがあります。

「1つの約束」
 難破して、わが身は怒濤に巻き込まれ、海岸にたたきつけられ、必死にしがみついた所は、燈台の窓縁である。やれ、嬉しや、たすけを求めて叫ぼうとして、窓の内を見ると、今しも燈台守の夫婦とその幼き女児とが、つつましくも仕合せな夕食の最中である。ああ、いけねえ、と思った。おれの凄惨な一声で、この団欒だんらんが滅茶々々になるのだ、と思ったら喉のどまで出かかった「助けて!」の声がほんの一瞬戸惑った。ほんの一瞬である。たちまち、ざぶりと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一呑みにして、沖遠く拉らっし去った。
 もはや、たすかる道理は無い。
 この遭難者の美しい行為を、一体、誰が見ていたのだろう。誰も見てやしない。月も星も、それを見ていなかった。しかも、その美しい行為は厳然たる事実として、語られている。
 ここに作者の幻想の不思議が存在する。事実は、小説よりも奇なり、と言う。しかし誰も見ていない事実だって世の中には、あるのだ。そうして、そのような事実にこそ、高貴な宝玉が光っている場合が多いのだ、それをこそ書きたいというのが、作者の生甲斐になっている。


太宰治というと「人間失格」、「斜陽」、「走れメロス」などが代表作ですが、自殺を繰り返し、ついには妻以外の女性と心中してしまう生涯から、一般的に暗いイメージがあるのではないでしょうか?

私も太宰治が本当はどんな人間だったのかを確かめたくて、小説はもとより、彼の伝記や評論、友人や知人の回想録まで必死になって読みました。
しかし当然のことながら、活字でしか情報が得られず、しかも実際に会ったこともない人間をすべて理解することは不可能でした。

ただ私が思ったことは、上記の「1つの約束」のようなお話しを描く人だということでした。
本当に大切なことは何か
それをわかっている人だと思いました。
彼は世間から何と言われようと、自分が本当に大切だと思うことを、生涯をかけて書こうとしたのだと思います。






私はシーが3歳の誕生日を迎えた日から、1つのことを続けようと決めました。
それは毎日シーの写真か動画をiPhoneで撮ることです。
シーとの暮らしを映像で残そうと思ったのです。
いわば1つの約束?


シーはよく私を見つめていることが多いです。
台所のテーブルで晩ご飯を食べている時も、引き戸の間から顔を覗かせてじっと私を見ています。
台所の割と大き目な椅子に、半ば寝そべるようにふんぞり返っている時も、すぐ傍でじっと見つめています。
すでに晩ご飯は食べたばかりだからお腹が空いているはずはありません。なら遊んで欲しいのでしょうか?
シーなーに?

私はそんなシーの見上げる表情がとても愛くるしくて、決めた通りiPhoneで写メや動画を撮り続けています。


今年の冬、晩ご飯を食べて終えて、500mlの缶ビールがまだ半分ほど残っていたので、iPhoneと缶ビールを持ってお風呂に入りました。
まあとても行儀がいいとは言えませんが…

浴槽から脚を投げ出してふんぞり返るように浸かり、残りの缶ビールを飲みながらiPhoneで映画を観ていていました。
するとお風呂場の半透明なガラス扉にシーの影が見えました。
シーはガラス扉にジャンプしてアタックしたり、前足でガサガサ引っかいたり、なんとかお風呂のガラス扉を開けようとしていました。
シーお風呂に入ったら濡れてしまうよ

しばらくはいろいろ頑張っていましたが、ついには諦めたのか、ようやく半透明のガラス扉から影が消えました。
私は、せっかくふんぞり返っていい気分でビールを飲みながら映画を楽しんでいるのにと思い、扉を開けてあげなかったのです。





ガタガタ!
私は物音がして目が覚めました。
なんと浴槽に浸かりながら、いつの間にか寝てしまっていたのです。
そしてシーがさかんにしっぽを振って目の前にいることに気がつきました。

あ!シー
どうした?
扉開けたんだ

どうやらシーはお風呂場のガラス扉を開くことに成功したようです。
とても嬉しそうに浴槽に前足をかけて大はしゃぎしそうな勢いでした。

あ!iPhoneは?
浴槽の蓋をテーブル代わりに使っていたのですが、その上にあるはずのiPhoneがありません。
まさか?
すかさず浴槽の底を手で探りました。
するとやはりiPhoneは浴槽の底に落ちていました。
ヤバ!

幸いiPhoneはいつも通りシーの待ち受け画面のままでした。
ホームボタンを押してもきちんと画面が切り替ります。
よかった大丈夫だ

以前の携帯なら水に浸かれば操作不能になるところでしたが、私の使っているiPhone7は防水機能があり、多少水に浸かっても大丈夫なようです。

ごめんねシー
さっきはごめんね
シーが入って来てくれたお陰でiPhoneも無事だったよ

何もわからないシーは浴槽に前足をかけてしっぽをさかんに振っていました。
もしかしたらシーは俺の救世主?

私はシーの頭を撫でてあげました。
シーも私の顔を舐めてくれました。


1つの約束
それからも毎日シーの写真と動画をiPhoneで撮り続けています。
やはりシーはいつも舌をちょっとだけ出して、見上げるように見つめてくれます。
シャッターチャンス

今私はこうしてAmebaブログでシーのことを書いている他に、毎日TwitterとInstagramでシーの写真と動画をアップしています。
できるだけインスタ映えする写真と動画が撮れて、皆さんに見ていただけたらと思っています。


シーズーと一緒に映画

愛犬シーズーのシーと毎日iPhoneで映画を観てます 私が観て来たたくさんの映画を紹介いたします

0コメント

  • 1000 / 1000