シーとマリア Part11
デブ活
胸が重いです。
頬に、ヌルッとした感触がありました。
シーの顔が、ドアップです。
びっくりしました。
目の前に、シーがいます。
仰向けに寝ていた私の胸に登って、顔をペロペロ舐めていました。
避けるように横を向いても、お構いなしで舐めて来ます。
もうおでこやら、目蓋やら、鼻やら、頬やらどこでも舐めて来ます。
なんでだろう?
と思うぐらいペロペロ舐め続けます。
シー
もういいよ
シーの攻撃を回避するには、腕で短い首をロックするように、羽交い締めにするほかありません。
朝の攻防の始まりです。
東窓の古びたベージュのカーテンは、全体が仄かに明るくなっていました。
ガレージの屋根に当たる、微かな雨音が聞こえます。
今日も朝から雨です。
秋霖のようです。
闘いのあと、シーは東窓の地袋に上がって、白いしっぽの先だけを残し、窓ガラスとカーテンの間に潜り込んで、外をじっと眺めていました。
大好きな散歩に、行きたそうです。
まだ薄暗い部屋の中、布団に寝転んだまま、iPhoneのLINEを確認しました。
マグダラのマリアから、LINEが届いています。
デブ活中
わぁーい♬
(写メつき)
これだけでした。
どうやら意味を、解読しなくてはなりません。
デブ活とは?
細身の彼女が、たくさん食べて少し太ることを試みているということらしい。
ようするに、少しデブになるための活動という意味のようです。
わぁーい♬?
これは、おそらく昨日、デブ活のためにたくさん食べることができて、嬉しいということでしょう。
うまくいって、わぁーい♬
LINEには、写メも送られていました。
マックのハンバーガーを持っています。
ハンバーガーを、食べたのだと思われます。
私は昨日、彼女からの課題に答えるために、10数年振りに「風の歌を聴け」を読みました。
いちばんたいせつなことは、目に見えない
「森」を思い、「星の王子さま」を思い、「風の声」を聴こうと思いました。
そして、ようやく答えを見つけて、LINEを送りました。
しかし、彼女はそのことには一切触れていません。
デブ活中
わぁーい♬
だけです。
答えが間違っていたのかな?
そんな不安な気持ちになりました。
東窓の地袋の上で、白いしっぽの先だけ残して、カーテンの向こう側のシーは、止むことのない雨空を、飽きずに眺めていました。
喉が渇いたので、隣のダイニングの冷蔵庫から、アサヒの糖質0ビールを取って来ました。
iPhoneからは、辻井伸行のピアノ演奏を再生しました。
「奇跡のピアニスト、辻井伸行デビュー10周年、感動と涙の全軌跡」というタイトルです。
まず、ドビュッシーの「月の光」の演奏が、始まりました。
シーが居座る東窓のカーテンを捲ると、ガレージの屋根の上の空は、白っぽい灰色一色に覆われていました。
雨雲はありません。
白っぽい灰色一色の空から、細い糸のような雨が連なっています。
ドビュッシーの「月の光」が、灰色の空と重なり合って、ピアノの音色が悲しく感じます。
シーは、私を見上げると、再び、灰色の世界に戻りました。
おはよう
答えは、鼠
再び、LINEを送りました。
すぐに、返事が来ました。
デブ活中につき
答えは会った時に
Googleで、仙台市内で犬同伴可能なお店を検索しました。
イタリアンの「MEALS」というお店が、とても良さそうです。
お酒もビール、カクテル、ワインがあり、犬などのペットも、同じテーブルに同席できます。
さっそく、予約してみることにしました。
マグダラのマリアにもLINEを送りました。
シーも一緒に、食事のできるお店を見つけました
ぜひ、今度行きましょう
「風の歌を聴け」の答えを教えてもらい、また幼い頃からの長年の疑問であった例の件も、聞き出してみようと思いました。
金髪の王子さまは、自殺したの?
シーは、まだ窓越しに外を眺めています。
もし雨が上がったら、散歩に行こうと思いました。
シー
今度ご飯を食べに行くよ
シーは、カーテンの下の、白いしっぽの先をちょっとだけ動かしました。
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