シーとマリア part14



浅間山の微笑み


秋の空は、変わりなく青いキャンバスのような爽やかな色彩を描いていました。
高いところに、ほうきで掃いたような薄いすじ雲が見られます。

東北自動車道から北関東自動車道、関越自動車道を経て、藤岡ジャンクションより、ようやく上信越自動車道に入りました。
メタリックシルバーのMINIクーパーは、秋の風を感じながら、快調にBMWサウンドを奏でています。
もう正午を過ぎました。

スピーカーからは、松たか子の「アナと雪の女王」の「Let It Go」をはじめに、ずっとクラッシック音楽が続き、今はジブリ映画の主題歌が流れています。
辻井伸行のピアノで、Ravelの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が流れると、太平洋沿岸の田園の拡がる農村で暮らした小学校時代の思い出の「森」が蘇って来ました。

これから起きることが、たとえどのようなことであれ、曇りなき眼で見定める

決意を新たにしました。

キリストは再び十字架にかけられる


上信越自動車道の両側は、小高い山や森が続き、日差しを浴びた緑が、より一層深く感じられます。
景色が、信濃らしい高原へと移りました。

助手席の私に抱かれていたシーは、すっかり飽きて、もぞもぞ動きます。
今にも腕の中から、飛び出しそうです。

シー
もう少しだから
我慢して

ハンドルを握るマグダラのマリアも、黒いキャップの下の奇跡のような美しい顔に、微笑みを浮かべます。

シーちゃん
あとでおいしもの
あげるからね

まるで、赤ちゃんをあやすママの口調です。

ここまで来る間に、2度パーキングエリアで休憩し、シーに用足しを兼ねて散歩をさせました。

土曜日ということもあり、どのパーキングエリアも程よく混雑していました。
停車中の車両の合間を縫って、黒いキャップに黒いミニの彼女が、シーと歩く姿はかなり目立ちます。
昼間のパーキングエリアで、絶世の美女が、白とゴールドのシーズーと歩く光景は、なかなか見れるものではありません。

シーは、初めて見る景色に、とても興奮してはしゃいでいましたが、アスファルトの駐車場の真ん中で、堂々と、軽く後ろ足を広げてしゃがみ込み、オシッコを披露しました。
小さな水たまりができて、白線の上にまで流れます。
彼女は、大笑いです。

シーちゃんは
大胆なお嬢様


碓氷軽井沢インターチェンジで、上信越自動車道を降りました。
軽井沢市内中心部へは、県道を道なりに進みます。
樹々の中を、疾走しました。
高原の風が、爽やかです。

やがて広いゴルフ練習場が現れ、秋の日差しを浴びてグリーンカラーに映えるゴルフコースも樹々の隙間から見られました。
北の青い空の下には、浅間山が聳えています。

スピーカーからは再び、松たか子の「アナと雪の女王」の「Let It Go」が流れています。

ありのままで空へ風に乗って
ありのままで飛び出してみるの


交差点を右折すると、いよいよ軽井沢市内中心部です。
宿泊先は、犬と滞在できるプリンスホテル東館ドック同伴用コテージです。
ゴールデンウィークに、何度もシーを連れて来た馴染みの宿です。

やはり土曜日なので、中心部へ向かうプリンス通りは、渋滞していました。
やがて、軽井沢プリンスホテルの巨大なショッピングプラザが見えて来ました。

JR軽井沢駅前を通り過ぎ、ショッピングプラザを後にして、ようやく樹々に囲まれた軽井沢プリンスホテル東館に着きました。
今年のゴールデンウィーク以来です。

秋のプリンスホテル東館は、ショッピングプラザの賑わいから逃れて、紅葉前の緑に囲まれた、落ち着いた静けさに包まれていました。
どこからか、小鳥たちのさえずりも聴こえて来ます。

車を降りると、ようやく解放されたシーは、リードを引っ張るように歩き出します。
しっぽをさかんに振って、とても嬉しそうです。

マグダラのマリアは、美しく優しさに満ちた笑顔でシーを見つめます。

シーちゃん
お腹空いたでしょ
私はペコペコ
デブ活しなくちゃ


チェックインまで時間があったので、軽井沢プリンスホテルショッピングプラザで、昼食を取ることにしました。

メルセデスなど外車が並ぶ駐車場から、ショッピングプラザへ向かいました。
秋の日差しが暖かく、久しぶりに眺めた浅間山が、優しく微笑んでいるようです。

彼女の父親を探す旅…
浅間山が、きっと見守ってくれる


プリンスホテルショッピングプラザのウエストエリアにあるペットエリアに、向かいました。
ショッピングプラザ内は、様々な人たちで賑わっています。
犬を連れた方も、大勢見られました。

パラソル付きの屋外のテーブルで、ペットと食事ができる「ドッグデプト+カフェ」があります。
まずは、隣の「ペットパラダイス」で、シーのご飯とおやつをたくさん買いました。

天井の青い空の下、パラソル付きの屋外の木製のテーブルで、秋のそよ風を感じながら、彼女とシーとの楽しい昼食です。
私は軽井沢高原ビールを飲みながら、黒いキャップを外した黒髪のショートカットのデブ活にいそしむ彼女と、負けじとデブ活に励むシーを眺めました。

シーは、あっと言う間におやつをたいらげ、もっと頂戴と私の膝に、前足を乗せておねだりです。

シー
もう終わりだよ
おデブになるよ

長い睫毛に茶色の瞳の彼女が、微笑んだ後に、やや曇った表情で、黒いCHANELの手さげバックから、白い封筒を取り出しました。

これが唯一の手がかりよ

秋の日差しが、彼女の黒髪を少しだけベージュに染めています。
よく見ると彼女の髪は、純粋な黒ではなくやや茶色がかった黒髪だということがわかりました。

耳には白い花形のVan Cleefのピアス、首にも白い花形のVan Cleefのペンダント。
そして、クロエオードパルファムの香り…

彼女の願いを同意した夜、彼女は右頬にキスをしてくれました。
そして、仙台市の定禅寺通りの欅並木から「声」が、聴こえました。

彼女たちと歩みなさい

幼い頃から、ずっと心の奥底にしまっていた思いと謎が、これから解き明かされて行くのかもしれない

私は、秋の日差しが注ぐ、木製のテーブルに置かれた1つの白い封筒を見つめました。

キリストは再び十字架にかけられる

北の青い空の下に、深い緑色の浅間山が聳えていました。




シーズーと一緒に映画

愛犬シーズーのシーと毎日iPhoneで映画を観てます 私が観て来たたくさんの映画を紹介いたします

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