シーとそよ風 ptrt1



死にたい

カヨリの口癖でした。


ろくに恋愛を経験しないまま20代後半を迎えていました。
友人から言わせると理想が高すぎるらしいのですが、それでも好きになった女の子は、何人かいました。

しかし、すべてフラれました。
告白できずに胸の中に留めた恋もありましたが、告白すれば、すべてフラれました。

流行りの服を着て、流行りの髪型にしてもダメでした。
(チェッカーズのフミヤの髪型)

なぜだろう?

ジャニーズのような美男子ではないけれど、顔は普通だし、オシャレにも気をつけている。
気遣いもできて、優しくもできるし、口下手でもない。
冗談だって言えるのに…

オオツキは、何を考えているのか
わからないところがある

大学で同じクラスだった親友のヒグチの言葉です。

そんな風に見られていたのか?


大学生の頃は、お金が入ると、後輩を連れて仙台市の繁華街の国分町のパブへ行き、女の子に声をかけました。
いわゆるナンパ。

しかし、ほとんどうまく行ったことはありません。

髪の長いとても可愛いけど、ちょっとヤンキーぽい女の子から誘われました。

部屋に来てもいいわよ

朝陽がカーテンを明るくするのを
自分のベッドから見たいんだ

来ないの?
へんなヤツ

いつも、明るくなったカーテンを、自分のベッドから見つめながら後悔しました。

なぜ泊まりに行かなかったのだろう
チャンスだったのに…


仕事で近くの仙台法務局へ行くと、見慣れないとてもきれいな女の子がいました。
すかさず、法務局の仲の良い歳下の男性職員にチェックを入れました。

あの子かわいいね
バイトの子?

はい
月曜日から来てますよ
オオツキさん気に入ったんですか?

うん
とてもタイプ

なら
歓迎会ってことで
飲みに誘ってみますよ

頼む
よろしく

それから間もなく、流行りの聖子ちゃんカットで小柄で腕が折れそうなほど細い、見た目はお人形さんのようなカヨリと飲みに行くことになりました。

しかし、初めて話をした時から、カヨリは変わっていました。
見た目とのギャップにびっくりしました。

自分に関心のあること以外まず話をしません。
漫画が好きで、おそらくずっとアニメの話しをしました。

そして、初めて2人だけで食事に行った時、カヨリは目を細めて、テーブルの上の私の手を握りました。

死にたい

1回目の死にたいです。


しかし、その後、彼女は私を無視するような態度を取るようになりました。

よくわかりませんが、彼女は、法務局で見かけても、一切言葉を交わそうとしなくなりました。

なぜ?
やっぱりまたフラれたんだ

およそ2年が過ぎました。
私は、カヨリのことを気にしながらも、ほとんど諦めていました。

すると、勤務先の後輩の女の子が、ニヤニヤしながら1通のクリーム色の封筒を差し出しました。
法務局に行った時、カヨリから私へと頼まれたようです。

オオツキさんの彼女?
可愛い子ね

すぐにトイレに入り、封筒を開けました。


オオツキさん

13日の朝、8時30分までに新幹線乗り場のかいさつ口の横にあるみどりの窓口、きっぷ売り場の前に来て下さい。

ステンドグラス(2階)の正面のエスカレーターに乗れば、すぐにみどりの窓口の前へ出られます。
わからなかったら駅員さんに聞いて下さい。

それから、8時30分までにオオツキさんが来なかったら私はひとりで東京へ行きます。
もし何かあって、たとえば急用が出きて、オオツキさんが私といっしょに行けない事情ができても、私の家にへも、法務局へも絶対に連絡しないで下さい。
(家にも職場にも内しょで行くのだからね、お願いします。)

オオツキさんも私が8時30分までに、みどりの窓口の前へ来なかったら、何かの事情があって行けなくなったと思って下さい。
この場合も絶対に職場にも私の家にも連絡しないでね。
これだけは絶対に守ってね。

だから新幹線のきっぷは13日の朝に2人が顔をあわせてから買いましょう。(おそらく2万円位です)
8時50分発のやまびこ10号か、9時発のやまびこ106号に乗ろうかなと私は思ってます。

わがまま言って本当にごめんね。
(本当はそう思ってないのかな?)

私ひとりで行っても用事は足りるのだけどもね。

でも2年間と半年あまり、あなたをふりまわしたせきにん(漢字がわからないのだ!)は私にあるから、一応義務として、あなたを佐藤さんの所へ連れて行った方が良いかもしれない。

まあ、とにかく彼女(佐藤八重子さん)のもとへ行ってみて、私が、12年間の間、何を苦しんだのか、できるかぎりの表現方で話してみようと思ってます。うまく話せると良いのだけどね。

彼女は多分私の話しをまともにとりあわないと思います。
それでも、形だけでも、この話しだけはしておかなければと私は思ってます。
(また同じことをくり返してしまった)
それではね!


9月13日の朝。
職場に有休をもらって、仙台駅3階のみどりの窓口のきっぷ売り場に向かいました。

秋のそよ風が、何かを歌っているような、爽やかな朝でした。



シーズーと一緒に映画

愛犬シーズーのシーと毎日iPhoneで映画を観てます 私が観て来たたくさんの映画を紹介いたします

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