2018.11.25 15:38シーと森の隠遁者 Part12登り棒淡いピンク色の花びらがふっくらです。綿あめのように膨らんだ何本もの桜の木が、広い校庭を囲んでいます。ときおり風によって、花びらが舞います。地面がピンク色に染まります。真新しいスーツの男の子たちと、上品なドレスの女の子たちが、大き過ぎるランドセルを背負ってぎこちない笑顔を見せ...
2018.11.18 10:18シーと空の怪物信じられない優しさに満ちた空でした。澄んだブルーの空には、ひとつの雲もありません。涙ぐましい微笑みの空…愛犬シーズーのシーと、いつもの散歩道の垣根付きの舗道を歩いていました。垣根の葉は、燻んだ赤ワインのような色に染まっています。シーは、垣根の下に顔を潜らせて匂いを嗅いでいます。濃...
2018.11.12 01:53シーとマリア Part17マリアの音色軽井沢万平ホテルは、秋の陽が注がれ半分紅と黄色に色づいた樹々に囲まれていました。昭和初期に建てられた白い壁の趣きのある本館アルプス館は、3階建ての木造建築です。中央の玄関に入ると、赤い絨毯が広がり、落ち着いたレトロな雰囲気がタイムスリップしたかのようです。低い天井から...
2018.11.04 19:57シーと森の隠遁者 part11小さな白い雲「一本松」の黒く逞しい幹から太い枝を登ると、松の葉がぽっかり開いている「展望台」と呼んでいた空間があります。「展望台」から空を見上げました。澄んだ青空にうろこ雲が、気持ち良さそうに並んでいます。春の太陽は、すべてを一新させ、新しい命に微笑んでいます。周りの田んぼは、冬...
2018.10.29 08:17シーとマリア part16信じられない真実に満ちた微笑み 丸太を重ねた壁の南窓には、柄物のベージュのカーテンが引かれています。遮光カーテンのため、隙間から僅かに朝日が溢れるだけです。高原の澄みきった静謐な空気を感じます。iPhoneから辻井伸行のピアノで、Ravelの「亡き王女のためのパヴァーヌ...
2018.10.22 07:45シーと森の隠遁者 part10美しい声よく晴れた秋の日曜日。空は、たくさんのひつじ雲が、雲の底に薄灰色の影をつくりながら浮かんでいました。白いレースのカーテンから陽射しが差し込む、茶の間の畳に寝転んで、箱型の大型のカラーテレビで「仮面ライダーV3」を観ました。もうすぐ、悪の組織ショッカーの首領の正体が明らかに...
2018.10.16 20:03シーとマリア Part15世界の約束樹々に囲まれたコテージは、秋の夕闇に包まれました。浅間山も、闇の中です。紺碧色の空には、たくさんの星が散りばめられていました。高原の澄んだ空気が、夜空を大きくします。星たちが手に届きそうです。やはり少し冷えました。8畳ほどのリビングのヒーターと、床暖房を点けました。天井...
2018.10.10 17:57シーと星たちたくさんの星が、散りばめられていました。南の空の低いところに白く輝いているのは、フォーマルハウトです。天頂近くには、ペガススの大四辺形も見えました。救急車のサイレンが聞こえました。愛犬シーズーのシーは、一瞬立ち止まりました。振り向いて私を見つめます。どうしたの?シーは、はるか彼方...
2018.10.07 23:03シーと森の隠遁者 Part9「森」の声秋が深まりを見せた頃…「一本松」を、取り囲むように拡がる田んぼは、稲刈りが終わり藁があちこちに積まれていました。つい何週間か前まで、稲穂が黄金色に輝き中心に「一本松」が、すくっと構えていました。稲穂があたかも太平洋の波のように、風に揺れました。それは黄金色の海原でした。...
2018.10.06 23:12シーとそよ風 ptrt1死にたいカヨリの口癖でした。ろくに恋愛を経験しないまま20代後半を迎えていました。友人から言わせると理想が高すぎるらしいのですが、それでも好きになった女の子は、何人かいました。しかし、すべてフラれました。告白できずに胸の中に留めた恋もありましたが、告白すれば、すべてフラれました。...
2018.10.05 10:12シーとマリア part14浅間山の微笑み秋の空は、変わりなく青いキャンバスのような爽やかな色彩を描いていました。高いところに、ほうきで掃いたような薄いすじ雲が見られます。東北自動車道から北関東自動車道、関越自動車道を経て、藤岡ジャンクションより、ようやく上信越自動車道に入りました。メタリックシルバーのMI...
2018.09.30 09:03シーと森の隠遁者 Part8曇りなきまなこ雲ひとつない夜空でした。南の空にペガススの四辺形が見えます。前方の白いコンクリート造りの建物の、2階の純子の部屋は、今夜も明かりがなく、ピンク色のカーテンがぼんやり霞んでいました。彼女は毎晩のように、「森」の中の「隠遁者」の家へ通っています。眼下の白いコンクリート造...